Excelで在庫管理をがんばってみた|できることと行き詰まるポイント

パソコンで在庫管理を始めようと考えたとき、最初の選択肢になるのがExcelです。

自分で作れば追加の費用はかかりません。ソフトを買う必要も、月額の契約を結ぶ必要もない。「Excelで作っておいて」と指示されて、担当することになった方も多いのではないでしょうか。

実は私たちのスタッフにも、Excelで生産管理と在庫管理を組んだ経験を持つ者がいます。この記事では、その実体験も交えながら、Excelでどこまでできて、どこで行き詰まるのかを整理します。

Excelで在庫管理を作ってみた話

ある鋳造工場でのことです。当時、在庫の記録は手書きのノートでした。数量は正の字、鉛筆で書き込むだけ。当然ながら、在庫管理のソフトはありません。

「在庫管理のソフトはないんですか」と聞くと、「そんなものはない。買うと高いのか」という会話になります。生産管理と一体になった製品で10万円前後だと伝えると、それなら自分で作れ、という話になりました。当時はまだ、クラウドの在庫管理システムなど存在しない時代です。

無料のテンプレートでは足りなかった

最初は、公開されている無料のExcelテンプレートを使うつもりでした。

しかし、実際に必要だった項目を並べてみると、とても足りません。発注日、出荷予定日、鋳造予定日、鋳造予定数、出荷数、不良数、分納、加工出荷。これらを関連づけて数式を組み、しかも現場の担当者が迷わず使える形にしなければなりません。

結局、一から作ることになりました。同業他社のソフトを見せてもらいながら、納期と在庫に追われる合間に組み上げ、どうにか動くものができました。

できあがった後に待っていたもの

完成したファイルに、現場の担当者に数字を入力してもらおうとしたところで気づきました。パソコンの操作そのものに慣れていない方が多かったのです。マウスの持ち方から説明する状況でした。

結果として、現場が数えた正の字を、担当者が代わりにExcelへ入力することになりました。発注日、納期、加工、鋳造数。出荷が決まれば出荷数。加工先から戻れば戻り数。不良品の照合。

すべて手入力です。

バーコードもなく、現場の記録は鉛筆書きの数字だけ。社内LANもなく、パソコンを増やしたところで使える人がいない。「これ、Excelで管理する意味はあるのでしょうか」と聞いたところ、返ってきた答えは「数字が合っていればいい」でした。

いま振り返れば、この現場に足りなかったのはExcelの完成度ではありません。現場で発生した事実が、そのまま記録になる仕組みでした。

Excelでもできること

誤解のないように申し上げると、Excelでの在庫管理は十分に成立します。

  • 商品ごとの在庫数を記録する
  • 入出庫を記録して残数を計算する
  • 発注点を下回った商品に色を付ける
  • 期間ごとの出荷数を集計する
  • 取引先ごとの一覧を作る

商品点数が数十から百程度、担当者が1人、出荷が1日数件という規模であれば、Excelのほうが速いことすらあります。自由に列を足せますし、集計も思いのままです。

Excelが行き詰まる5つのポイント

1.複数人が同時に扱えない

共有ファイルにしても、同時編集での競合や上書きは避けられません。「誰かが開いているので編集できない」という状態は、出荷の締め時間に必ず発生します。

結果として、1人が入力係になります。現場で起きたことを、あとから人が転記する構造になり、ここで誤差が生まれます。

2.誰がいつ変えたか分からない

数字が合わなくなったとき、原因を追う手段がありません。上書き保存を繰り返したファイルからは、変更の履歴を復元できないためです。

「先週は合っていたはずなのに」という状況で、どこまで遡ればよいのかが分かりません。

3.場所(ロケーション)を管理できない

Excelで管理できるのは「何が何個あるか」までです。それがどこにあるかまでを維持しようとすると、商品が複数の棚に分かれた時点で破綻します。

探す時間がなくならない限り、出荷の効率は上がりません。

4.検品ができない

これが最も大きな違いです。Excelは記録の道具であって、間違いを止める仕組みではありません。

誤った商品を出荷しても、Excelは何も教えてくれません。バーコード検品であれば、そもそも次の工程に進めません。

5.モールとの在庫連携ができない

複数のECサイトに出店している場合、売れた瞬間に他店の在庫数を更新しなければなりません。手作業での調整には限界があり、更新が遅れれば売り越しが起こります。

切り替えを考える目安

次のような状態が出てきたら、仕組みを変える時期に来ています。

  • 入力係が1人に固定され、その人が休むと記録が止まる
  • ファイルが複数に分岐し、どれが最新か分からない
  • 棚卸のたびに大きな差異が出て、原因が追えない
  • 「在庫がありませんでした」という連絡が月に数回ある
  • Excelを作った本人しか、数式の中身を理解していない

特に最後の項目は見落とされがちです。属人化しているのは、作業ではなくファイルそのものという状態になっていることがあります。

移行するときに最初にやること

Excelからの移行で最初に取り組むのは、システムの選定ではありません。棚に番号を振ることです。

棚番を決め、商品と棚を結び付ける。この作業さえ終わっていれば、あとはどのシステムを選んでも立ち上がりが早くなります。

そして、いま使っているExcelは無駄になりません。商品マスタや初期在庫のデータとして、CSVでそのまま取り込めることがほとんどです。作ったものを捨てる必要はありません。

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