在庫の数と置き場所が正確に分からないまま、毎日の業務を回している。これ自体は、決して珍しいことではありません。
ベテランの担当者が把握しているのであれば、業務は回ります。実際、そのほうが速い場面もあります。
問題は、その状態がいつまで持つかということです。この記事では、在庫の所在が分からない状態が招く損失について、実際に起こりうる流れでご説明します。
「確かあるはず」で回っているうちは、問題は表面化しない
複数のECサイトやショッピングモールに出店していると、注文はあちこちから同時に入ってきます。一括して在庫を管理しなければ、どこかで齟齬が生まれます。
それでも、担当者の記憶と勘で回っている現場は多くあります。ときどき「在庫がありませんでした」とお詫びの連絡をすることはあっても、件数が少なければ大きな問題にはなりません。
ここが危ないところです。小さな綻びは、平常時には見えません。
キャンペーンで、一気に表面化する
あるとき、ショッピングモールのキャンペーンに合わせて大量の注文が入ったとします。
いつもの勘が追いつきません。「ここにこれだけあるはず」の在庫が見つからない。数字の上では十分にあるはずなのに、現物がない。
注文が入っていても、モノがなければ発送できません。「在庫がないため出荷できません」とご連絡し、謝罪することになります。
ショッピングモールにはお客様がコメントを書き込める機能があります。そこに「在庫がないなら売るな」と書かれてしまう。キャンペーンで集めたはずの新規のお客様に対して、最初の体験がこれになります。
売上を伸ばすための施策が、信用を失う原因になってしまうわけです。
在庫が「合わない」の中身
在庫が合わない状態には、いくつかのパターンがあります。
- 数は合っているが、場所が分からない……探せば出てくるが、時間がかかる
- 帳簿より実物が少ない……出荷したのに記録していない、紛失、破損
- 帳簿より実物が多い……入荷を記録していない、返品を戻していない
- モール側の在庫数が古い……更新のタイミングがずれている
それぞれ原因が違うので、対策も変わります。ただし共通して言えるのは、入荷と出荷が正確に記録されていれば、そもそも差異は生まれないということです。
失われているのは、欠品分の売上だけではない
在庫が把握できていない状態で失っているものを並べてみます。
- 販売機会……在庫があるのに「品切れ」にしている商品があります
- 過剰在庫……あるのに気づかず、追加発注してしまいます
- 探す時間……1日30分でも、年間では100時間を超えます
- 属人化……ベテランが不在の日に、現場が止まります
- 信用……一度失うと、回復には時間がかかります
特に見落とされがちなのが、2つ目の過剰在庫です。「見つからないから、とりあえず発注する」という判断が積み重なると、資金が在庫の形で寝ることになります。
WMSが必要になる頃合い
次のような状態が当てはまるようであれば、仕組みを入れる時期に来ていると考えられます。
- ベテランが休むと、その日の出荷が滞る
- 毎日の締め時間に、走り回って綱渡りの発送をしている
- 「在庫がありませんでした」の連絡が月に数回ある
- 棚卸のたびに大きな差異が出て、原因が追えない
- 複数モールの在庫数を手作業で調整している
特に1つ目は重要な兆候です。特定の人の記憶がシステムの代わりをしている状態は、その人が辞めた瞬間に業務が止まることを意味します。
最初にやることは、棚に住所を与えること
在庫管理の第一歩は、棚番(ロケーション)を作ることです。
棚に番号を振り、どの商品がどの棚にあるかを記録する。これだけで「探す」という作業がなくなり、誰が作業しても同じ場所にたどり着けるようになります。
そのうえで、入荷と出荷をバーコードで記録していけば、在庫数は自動的に正しくなります。棚卸で数える作業は、記録が合っているかを確認する作業に変わります。
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