物流システムを調べていると、WMS・TMS・OMSといった略語が並び、どれが自社に必要なのか分からなくなることがあります。似たような文脈で紹介されることも多く、機能が重なって見えるためです。
結論から言うと、この3つは担当する工程がそれぞれ違います。混同したまま比較検討を進めると、必要のない機能に費用を払ったり、逆に本当に必要なシステムを後回しにしてしまったりします。
WMSが担う範囲:倉庫の中の在庫・入出荷
WMS(Warehouse Management System)は、倉庫の中で起きることを管理するシステムです。どの棚に何がいくつあるか、入荷した商品をどう検品するか、出荷する商品をどう引き当ててピッキングするか。
対象となるのは、あくまで倉庫の四方の壁の中です。商品が倉庫に届いてから、梱包されて配送業者に渡るまでの工程を扱います。
TMSとの違い:倉庫を出たあとの配送・輸送
TMSが何をするシステムか
TMS(Transportation Management System)は、倉庫を出たあとの配送・輸送を最適化するシステムです。複数の配送先へのルートをどう組むか、どの運送会社にどの便を割り当てるか、積載効率をどう上げるか。
WMSが「倉庫の中」を見ているのに対し、TMSは「倉庫から先の道のり」を見ています。担当する空間がそもそも違います。
WMSと連携する場面
出荷実績や送り状データをWMSからTMSへ渡すことで、配送計画に反映させる連携が一般的です。ただし、月間出荷が数百〜数千件規模で、宅配便を中心に発送している通販事業者様であれば、配送ルートの最適化までを自社でシステム化する必要性は高くないケースが多く見られます。運送会社側の集荷・配送網をそのまま使う形で十分な場合がほとんどです。
OMSとの違い:複数チャネルの受注・在庫の一元管理
OMSが何をするシステムか
OMS(Order Management System)は、複数のネットショップやモールで発生した注文を一元的に取り込み、在庫数を横断で連携させるシステムです。楽天市場、Yahoo!ショッピング、Amazon、自社サイト。それぞれの注文をまとめて管理し、どこかで売れた分を他の店舗の在庫からも自動で差し引きます。
OMSが見ているのは「受注」という情報の流れであり、WMSが見ている「モノ」の流れとは対象が異なります。
WMSと連携する場面
複数モールに出店している通販事業者様にとって、OMS(またはOMSに近い機能を持つ受注管理システム)とWMSの役割分担は重要な論点です。受注をまとめるのがOMSの仕事で、倉庫の中を管理するのがWMSの仕事。
OMSの在庫機能だけで倉庫の運用まで賄おうとすると、棚の管理や検品の仕組みが不足しがちです。逆にWMS単体で複数モールの受注を集約しようとすると、無理が出ます。それぞれの得意分野を組み合わせる前提で選ぶことが、遠回りを避ける近道です。
自社に必要なのはどれかを見極める視点
3つのシステムのうち、どれから手をつけるべきかは、いま最も損失を出している場所で決まります。
- 誤出荷や検品ミスが多い、商品を探すのに時間がかかる → WMSが効きます
- 複数の配送先へのルート効率化や、複数の運送会社の使い分けに課題がある → TMSの領域です
- 複数モールの在庫がずれる、注文の集約に手間がかかる → OMS(受注管理システム)の領域です
月間出荷が数百〜数千件規模で自社倉庫から自社出荷している通販事業者様の場合、最初に効果が出やすいのはWMSであることが多い傾向にあります。誤出荷や在庫のずれは、日々の出荷のたびに損失が積み重なる問題だからです。
3つを同時に揃える必要はない
物流システムの比較検討では、「本格的にやるなら全部そろえるべきでは」と考えてしまいがちです。しかし、現状の出荷規模に対して過剰な投資になっては本末転倒です。
すでに使っている受注管理システム(ネクストエンジン、CROSSMALLなど)があるなら、そこにOMSの役割は任せ、倉庫の中の課題にはWMSを充てる。配送ルートの最適化は、出荷件数がさらに増えてから検討する。このように、いま損失が大きい工程から段階的に手を打つ方が、投資対効果を見極めやすくなります。
まとめ
WMS・TMS・OMSは、それぞれ「倉庫の中」「倉庫から先の配送」「複数チャネルの受注」という別々の工程を担当するシステムです。比較検討の際は、まず自社がどの工程で最も損失を出しているかを整理し、その工程に対応するシステムから検討することをおすすめします。
倉庫内の在庫管理・誤出荷対策から着手したい場合の選び方は、以下の記事にチェックリストとしてまとめています。
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