実録!こんな在庫管理は嫌だ1|記録が壊れていく4つの原因

在庫管理の現場で実際に体験した話をご紹介します。少し古い時代の話ですが、いま同じ状態に近い現場は決して珍しくありません。

全3回の第1回は、「在庫が数えられない状態」がどう生まれるかという話です。

「コンピューターで管理できる人」という募集

平成に入って20年ほど経ったころ、ある製造会社に勤めることになりました。大手メーカーの下請けで、地方の山あいにある工場です。

募集要項は「製品部品の在庫がめちゃくちゃなので、コンピューターで管理できる人」。この時点で、状況はおおよそ想像がつきます。

入社の翌日から、現状把握が始まりました。

在庫表は、ノートに鉛筆書き

在庫表として渡されたのは、大学ノートでした。鉛筆書きで、数量は正の字。

笑い話のようですが、この方法自体が間違っているわけではありません。点数が少なく、書く人が1人で、その人がずっといるのであれば、成立します。

問題は、その前提が崩れたときに、何も残らないことです。

記録が壊れていく4つの原因

実際に現場を見て分かった、記録が信用できなくなる原因を挙げます。

1.書く人と、動かす人が違う

現場で商品を動かした人が、その場で記録するとは限りません。あとで別の人が転記する形になると、必ずずれが生じます。

記録は、事実が発生した場所で残さないと合いません。これが、あとから振り返ったときの最大の教訓でした。

2.置き場所が決まっていない

数だけを管理していても、どこにあるかが決まっていなければ、探す時間はなくなりません。そして探しても見つからないものは、「ない」ものとして扱われます。

実際、この会社では行方不明になっていた部品が、思いもよらない場所から出てきたことがありました。倉庫の外にまで在庫が広がっている状態でした。

3.数える単位が決まっていない

1個ずつ数えるのか、箱単位なのか。箱に何個入るのかが決まっているのか。ここが曖昧だと、数えるたびに違う答えが出ます。

4.締めのタイミングがない

いつ時点の在庫なのかが決まっていないと、数字を突き合わせようがありません。作業をしながら数えれば、当然合わなくなります。

「コンピューターで管理する」の前にあること

このとき求められていたのはシステムの導入でしたが、実際に必要だったのは、その手前の整理でした。

  • どこに置くかを決める(棚に住所を与える)
  • 何を単位として数えるかを決める
  • いつ記録するかを決める(動かしたその場で記録する)
  • 誰が記録するかを決める

この4つが決まっていない状態でExcelを導入しても、入力の手間が増えるだけで精度は上がりません。実際、当時Excelで作った管理表も、結局は手入力の作業を増やしただけでした。

いまであれば、棚に番号を貼り、バーコードで記録するという方法が現実的です。作業した瞬間に記録が残る形にすれば、転記そのものがなくなります。

いまの現場でも、形を変えて起きています

ノートと鉛筆という部分だけを見れば昔話ですが、構造としては現在の通販倉庫でもよく見かけます。

  • 入出庫の記録が、1日の終わりにまとめて入力される……作業と記録が離れている点は、ノートの時代と同じです
  • 在庫数はExcel、置き場所は担当者の記憶……担当者が休むと探せません
  • 棚から出したものを戻し忘れる……記録上は棚にあるのに、実物は作業台にある状態です
  • 返品の戻し入れが後回しになる……売れる在庫が売れないまま滞留します
  • 複数の場所に在庫が分散している……事務所、車、別倉庫。すべてが把握されているとは限りません

どれも、悪意や怠慢から起きているわけではありません。忙しいときに省略できてしまう構造になっていることが原因です。

省略できない形にする

記録の精度を上げる方法は、担当者に注意を促すことではありません。記録しないと作業が進まない形にすることです。

バーコード検品は、まさにこの発想です。スキャンしなければ次に進めないため、記録が作業の一部になります。あとで転記する工程がなくなれば、そこで生まれていたずれもなくなります。

棚番も同じです。置く場所が決まっていれば、置いたときに記録され、取ったときに記録されます。「あとで整理しよう」という余地をなくすことが、結果的にいちばん楽になります。

次回

第2回は、在庫の数字だけでなくその裏付けとなる情報が求められたときの話です。

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