実録!こんな在庫管理は嫌だ3

【前回までのあらすじ】
様々な困難を乗り越え、諸所問題が浮上しつつも在庫の数字は何とか合わせることができ、監査ドンと来い状態で迎えた当日。
しかし、部品を入れた白菜や南瓜のダンボールが整列している倉庫をみて、「専用の箱どこいった。社長呼んで来い」。
積んだ。

在庫数字が合わないわけとは

「そりゃ、合わないわけだよ」

監査担当者の後藤さん(仮名)は言います。

「部品専用の箱にいれたら、その箱になんぼ入るのかが決まってるわけだから、一箱なんぼって計算ができるし、大幅に違わないんだよ。小さいものは、一箱一杯入ったら何キロかって決まってるし、それが白菜とかかぼちゃとかみかんのダンボールだもの、数えなくちゃならないし、数はバラバラだし。」

その他にも、鋳造したままバリをとらずにポンポン入れっぱなしだったり、検査したり仕上げしたものを数を数えずにポンポン南瓜と白菜とみかんのダンボールに入れたりとか、入りきらなかったものは寝室だったり車の中だったり引き出しの中だったりと、いろいろ問題はあるのですが、ここでは黙っておくことにします。

「で、社長来ないね」
「そうっすね。ちょっと工場見に行ってきます」

工場へ向かってみると、社長担当の鋳造機械に別の社員が付いてます。

「社長どこ行きました?」
「さっき電話かかってきたみたいで、消防のあれこれでって、出かけましたよ」

その電話わたしからのじゃねえか逃げやがったあああああああああああ

整理整頓とルールが在庫管理の基本!

「すみません…社長が御隠れになりました」
「いや、死んでないから」

居ないのではしかたないので、様々な管理などわたしの一存で見せるわけにはいかず、本日は不本意だけどお開き。
しかし、これでアルミ素材の成分表のコラ疑惑を今突っ込まれる心配はなくなりました。

「しかたないな。これをこのまま報告して、明日部長と一緒に指導にくるから」
ついにトップも一緒に来て、あの白菜と南瓜とみかんのダンボールが並んだ倉庫を見られるのかと思うと、ひとんちの会社とはいえいたたまれません。

そのあとは後藤さんが一ヶ月ほど入り、指導となるだろうということです。
「整理整頓、ルール化が基本!ルールはうちの会社が決めるから、その旨社員に伝えておくように」
ええーー。伝えたところで動くんかいな。

後藤さんが検査室に顔を出し、「お邪魔しました」と挨拶をすると、パートのお姉さまたちから「二度と来なくていいわよー」「帰れ帰れー」「メーカーさんは暇なのねー」。
顔面蒼白になるわたしに、「君も大変だな…まあがんばれ」と励ましをいただきまして、不覚にも涙しそうになりました。
ごめんね後藤さん、まだまだ隠してあることがあるんです。

おかえりになった後で、大奥様におそるおそるお願いをします。

「あの専用の箱、まずはおうちから持ってきていただけませんか」
「ほんならうちの毛布とかシーツとか、どこに入れたらええの」

会社に監査が入るという大問題より大きい、寝室の押入れ問題。

それからそれから

翌日、メーカーの部長クラスがどやどやとやってきて、それはもう阿鼻叫喚のありさまでありました。
倉庫をみて卒倒しそうになったり(結局白菜と南瓜のまま)、鋳造現場の安全管理のいい加減さ、アルミ素材の再検査、福利厚生、労働基準法違反、いろいろが明るみに出て、在庫管理納期管理どころではない騒ぎ。

しかし、その後、メーカーは製作工場を海外に移した弊害が現れ、かなりのクレーム品を出してしまい、こんな小さな下請け工場の指導どころではなくなってしまいました。

そして、監査委員を説得できなかったということで、わたしはお暇をいただくことになりました(早い話がクビ)。
エクセルで作った在庫管理表はお蔵入り。
白菜と南瓜とみかんのダンボールは今後も健在。(毛布とシーツの勝利)
安全管理が甘かったツケが、社員の大やけどとなり、労災にしたがらなかったせいで労働基準監督署がやって来るわ、土壌検査でヤバくなって営業停止処分の噂。

数字に意識がなく、管理の意識がない組織は、在庫だけではなく全てがダメになっているようです。

退社してから一度だけ、その会社に行きました。
わたしがエクセルで作った在庫管理表の使い方を知りたいとのことでした。

「いよいよ在庫管理、ちゃんとするんですか?」
「いや、また監査がやってくるから、見られても良いように数字だけ入れとこうと思って」

監査は3年に一度やってくるそうです。
今では社員も注文数も激減して、大奥様も引退され、鋳造の釜はひとつしか稼動しておらず、在庫もアナログで数えられる範囲とのことでした。

諸行無常。

 


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