Excelで在庫管理をがんばってみたことがあります

パソコンで在庫管理をはじめようぜ!と思った時に出てくるのがExcel。
自分で作ればタダだし、ソフトを購入することも月額で契約することもないので、「よし。Excelでお前作れ」とか上司に言われて作らされることが往々にしてあるようです。

タダで在庫管理システムを使う方法

「こんな在庫管理は嫌だ」でも書きましたが、わたくしは平家の隠れ里のようなところにある工場で、生産管理と在庫管理を行なっていたことがございまして、そこで使用したのが「Excel」です。

社長は「コンピューターで管理」ってことまではどうやら知っているのですが、Excelが何者なのか、在庫管理のソフトというものは何なのか、全く知りません。
写真は正の字で在庫を把握しており、鉛筆殴り書きでノートに記されているのみ。

「在庫管理のソフトはないんですか?」
「ないぞ。それはどっかでくれるのか」
「くれやしません。購入するんです。生産管理と一緒になってるものなら10万前後ですかね」
「ふざけんな。なんのために雇ったと思ってんだ」

というわけで、Windows環境しかないので「Excel」で作成することに。
当時はクラウド在庫管理システムなんぞ、なかったのです。

簡単じゃない生産管理設定

世の中にはフリーで使えるExcelで作った在庫管理ファイルがあり、当初はそれを使う予定でした。
しかし、甘かった。
ただ数字を足し算引き算するだけではなく、そこに発注日、出荷予定日、鋳造予定日、鋳造予定数、出荷数、不良数、分納、加工出荷などなど、それはもうたくさんの設定が必要でした。

そして、それらを関連づけて数式を作成して、しかも階下のパートのお姉さまたちにもわかりやすく使いやすくせねばならんという課題があります。
ちなみに、階下のパートのお姉さまたちは、携帯電話は電話機能のみしか使わず、PCの電源の音でビビるという方々です。

「これは、専門もソフトを購入したほうが、もしくは安いのを購入してカスタマイズしたほうが良いと思います。バーコードとか使えるので、正確で速いです。」

と勇気を振り絞り、まずは社長の奥様に報告をしてみました。
すると、20分後に内線電話がかかり

「作れるんだろそれくらい。徹夜で作れよ。バーコードって喧嘩売ってんのか。ガチャ。ツーツーツー」

そういえば社長の頭はバーコード。地雷でした。

徹夜しろと平気で言う、残業代なんてでない、ブラック企業です。当時はそんな名前もありませんでしたけど。
メーカーに行ってみたり、お世話になってる加工会社に行ってソフトを見せてもらったりしながら作成していきます。
納期と在庫の現状に頭が爆発しそうになりながら、どうにかこうにか使えるものが出来上がりました。

結局アナログだという現実

やっと出来上がったExcelに、パートのお姉さまたちに本日の数字を入れてもらおうとすると、そこに控えていたのは「クリックって何?」というリテラシー。

「これがマウスです」
「クリックというのは、ここでこうカチカチっとします」
「カーソルをここに「カーソルって何さ」」

脱力orz

そんなわけで、パートのお姉さまたちが数えた正の字を、わたしがExcelに入力することになりました。
そのほかに、発注日、納期、加工、鋳造数をひとつひとつ入れていきます。加工先や納品先も入れていきます。
そして、いざ出荷となると出荷数を記入。出荷数を記入したら発送先へ伝票を手書き、加工先から戻ってきたら戻り数を入力、不良品が数字と合っているかの確認、鋳造数から加工、検査の生産管理の流れとラインを流れた数の入力…

結局手入力じゃねええかああああああああああああ(がしゃーん)

バーコードもないし、ラインを通過した時も鉛筆書きの数字しかないので、当然手入力しかない。
社内LANなんて夢のまた夢(インターネットにつながってもなかった)、PCを入れたところで使える人は皆無。

「これ、Excelで管理する必要あるんすか??(元も子も)」
「ばっかだなあ、お前は。こりゃ、監査のためにあるんだよ。ぶっちゃけ、数字があってりゃいいんだよ」

なんの落とし噺でしょうか。

パソコンが使えないからこそシステムは良いものを

この会社は、監査が終わった後わたしは退社となったので、まともにExcelを使ったのは半年くらいの間だったのですが、その間、社員がPCに触ることは一度もありませんでした。

使えない人にとって、Excelの表にカーソルを合わせて数字を入力するということだってものすごいハードルなのですね。

また、在庫管理は足し算引き算だけできていれば良いものではありません。
取り扱う商品の数や種類、出荷先が多ければ多いほど、アナログでは管理しきれず、確認ができなくなってきます。
バーコードでの自動入力や検索機能、データの連携機能が必須になってきます。
こうなると、Excelだけではとても作ることができなくなってきます。

「うちは誰もパソコン使えないから」
というところこそ、しっかりしたシステムを持つべきです。
これは本当です。切実です。

で、その会社はその後監査にひっかかりまくり、注文数は激減し、現在は家内制手工業になっています。
なので、鉛筆書きの正の字で十分だそうです。


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