通信規格も周波数帯も合わせたはずなのに、ハンディターミナルが無線LANにつながらない。そういうときに次に確認していただきたいのが、Wi-Fiのセキュリティ方式です。
スマートフォンをWi-Fiにつなぐとき、私たちがすることはパスワードの入力だけです。そのため、セキュリティに何種類もの方式があることを意識する機会はほとんどありません。
ところが業務用のハンディターミナルでは、この方式の違いがそのまま「つながる・つながらない」に直結します。この記事では、無線LANのセキュリティ方式の違いと、現場での確認手順をご説明します。
Wi-Fiのセキュリティ方式は4世代ある
無線LANのセキュリティ方式は、大きく4つに分けられます。
- WEP(Wired Equivalent Privacy)……1997年ごろから使われた最も古い方式
- WPA(Wi-Fi Protected Access)……2002年ごろ登場。WEPの弱点を補うために策定された
- WPA2……2004年ごろ登場。暗号化方式にAESを採用し、長く主流であり続けた
- WPA3……2018年登場。パスワードの解析に強い最新世代
名前が示すとおり、WEPは「有線LANと同等の機密性を無線で提供する」ことを目指した方式でした。しかし後に、暗号鍵が比較的短時間で解読できてしまうことが明らかになります。
そのため現在のWi-Fiルーターでは、WEPは初期設定から外され、選択肢としても目立たない場所に置かれるようになりました。古いハンディターミナルが「買ってきたルーターにそのままつながらない」のは、この変化が理由です。
暗号化方式(TKIPとAES)の違いも影響する
もう一段細かい話になりますが、WPA以降には「TKIP」と「AES」という2つの暗号化方式があります。
- TKIP……WEPの仕組みを土台に安全性を高めたもの。現在では非推奨
- AES……WPA2以降で標準的に使われる、現在も安全とされる方式
注意したいのは、TKIPを選ぶと通信速度に制限がかかるという点です。802.11nや802.11acの高速通信はAESと組み合わせることが前提になっているため、TKIPのまま運用すると規格上の上限が54Mbpsに抑えられます。
ルーターの設定画面で「WPA2-PSK(AES)」「WPA/WPA2-PSK mixed」といった表記を見かけるのは、このためです。
ハンディターミナルの対応状況を確認する
古い機種ほど、対応しているセキュリティ方式は限られます。代表的な機種の例を挙げます。
- キーエンス BT-910……通信規格は802.11bのみ。セキュリティはWEPとWPAに対応
- キーエンス BT-1000W(Bluetooth搭載モデル)……802.11b/g/nの2.4GHz帯。セキュリティはWEP・WPA・WPA2に対応
- キーエンス BT-1000W(Bluetooth非搭載モデル)……上記に加えて802.11aと5GHz帯にも対応
「WPAには対応しているがWPA2には対応していない」という機種は珍しくありません。ルーター側を最新の設定にすればするほど、古い端末は締め出されていくことになります。
まずはメーカーの仕様書で、お使いの機種がどのセキュリティ方式まで対応しているかを確認してください。
ルーター側で確認する3つのポイント
1.認証方式が端末側の上限を超えていないか
ルーターが「WPA3のみ」「WPA2のみ」に設定されていると、WPAまでの端末は接続できません。混在モード(WPA/WPA2-PSK mixed)にすることで、古い端末と新しい端末を同居させられる場合があります。
2.暗号化方式がAES固定になっていないか
TKIPにしか対応していない端末の場合、AES固定の設定では接続できません。ただし、後述するようにTKIPでの運用は推奨されません。
3.パスワードの文字数・文字種に制限がないか
古いハンディターミナルは、入力できる文字数や記号に制限がある場合があります。長く複雑なパスフレーズを設定していると、そもそも入力しきれないことがあります。
古い端末に合わせるときの、現実的な落としどころ
ここで悩ましいのが、古い端末に合わせると、ネットワーク全体のセキュリティを下げてしまうという点です。事務所のパソコンや来客用の端末まで同じSSIDにぶら下がっている場合、影響は倉庫だけにとどまりません。
現場で採られることが多いのは、次のような方法です。
- ハンディターミナル専用のSSIDを分ける……2.4GHz帯で、端末が対応する最も強い方式に設定する。他の業務用SSIDは最新の設定のまま維持できます
- ネットワークを分離する……ゲストネットワークやVLANの機能を使い、ハンディ用のSSIDから社内の共有フォルダなどへ到達できないようにします
- 端末の更新を計画に入れる……WEPにしか対応していない機種が残っている場合は、更新の検討をおすすめします
「古い端末が使えるかどうか」だけで判断するのではなく、倉庫のネットワークをどう分けるかという視点で考えると、無理のない構成に落ち着きます。
よくあるご質問
パスワードは合っているのに、接続を拒否されます
認証方式または暗号化方式の食い違いが疑われます。ルーター側を混在モードに変更して、接続できるかどうかを確認してみてください。それでも変わらない場合は、通信規格と周波数帯の確認に戻ります。
WEPでしか接続できない端末があります。使い続けても大丈夫でしょうか
その端末専用のSSIDを分け、ネットワークを分離したうえで、更新の計画を立てることをおすすめします。倉庫の中だけで完結する通信であっても、同じネットワークに他の機器がつながっていると影響が及びます。
複数メーカーのハンディターミナルが混在していますが、問題ありませんか
ゼータロジは特定の機種を専用端末として指定していないため、対応機種であればメーカーやモデルが混在していても同じように使えます。ただし無線の設定は機種ごとに異なるため、それぞれの対応方式に合わせて設定する必要があります。
セキュリティを確認しても、まだつながらないときは
無線LANの接続でつまずくポイントは、大きく3つあります。
- 通信規格と周波数帯……802.11a/b/g/n/ac/ax、2.4GHz帯か5GHz帯か
- セキュリティ方式(この記事)
- IPアドレスの設定……DHCPによる自動取得か、手動設定か
規格もセキュリティも合っているのに接続できない場合、IPアドレスが正しく割り当てられていない可能性があります。それぞれ以下の記事でご説明しています。
ハンディターミナル検品について、もっと詳しく
無線式とバッチ式の違い、機種を問わない設計、購入が難しい場合のレンタル、端末がなくても始められる無料のWebスキャンまで、ゼータロジのハンディ検品をまとめています。
