無線ハンディターミナルの無線LAN接続(通信規格の違い)

「スマートフォンは問題なくつながるのに、ハンディターミナルだけが無線LANに接続できない」

Wi-Fiルーターを買い替えたタイミングや、倉庫のネットワーク設備を入れ替えたタイミングで、このご相談をいただくことがあります。画面には「サーバーエラー」と表示されるため、システム側の障害を疑われる方も少なくありません。

ところが実際には、サーバーではなくハンディターミナルが無線LANにつながっていないだけというケースがほとんどです。そして原因の多くは、Wi-Fiの「通信規格」と「周波数帯」の食い違いにあります。

この記事では、無線ハンディターミナルが接続できないときにまず確認していただきたい通信規格の話を、順を追ってご説明します。

スマホがつながるのに、ハンディだけつながらない理由

スマートフォンは、発売時点で普及しているWi-Fiの規格をほぼすべて備えています。しかも、電波の状況に応じて自動的に最適な規格へ切り替えます。だからパスワードを入れるだけでつながります。

一方、業務用のハンディターミナルは、5年から10年、長ければそれ以上使われる機器です。バーコードを読んで数を数えるという用途では、古い端末でも実用上まったく困りません。そのため本体は現役でも、無線の中身だけが時代に取り残されていることがよくあります。

つまり、同じ場所に同じ電波が飛んでいても、スマホには見えているアンテナがハンディターミナルには見えていない、という状態が起こり得るわけです。

Wi-Fiの通信規格(802.11a/b/g/n/ac/ax)の違い

Wi-Fiの規格は「802.11」という数字のあとに続くアルファベットで区別されます。登場した順に、b → a → g → n → ac → ax と進化してきました。

  • 802.11b(1999年/2.4GHz帯)……最も古い規格のひとつ。最大11Mbps
  • 802.11a(1999年/5GHz帯)……同時期の5GHz専用規格。最大54Mbps
  • 802.11g(2003年/2.4GHz帯)……bの上位互換。最大54Mbps
  • 802.11n(Wi-Fi 4)(2009年/2.4GHz・5GHz)……両方の帯域が使える。最大600Mbps
  • 802.11ac(Wi-Fi 5)(2014年/5GHz帯)……5GHz専用の高速規格
  • 802.11ax(Wi-Fi 6)(2019年/2.4GHz・5GHz)……混雑に強い最新世代

ここで押さえておきたいのは、新しい規格は古い規格と互換性を持つ場合が多いものの、周波数帯そのものが違えば互換性は成立しないという点です。

5GHz帯にしか対応していないacのアンテナに対して、2.4GHz帯しか使えない端末は、そもそもアンテナを見つけられません。パスワードが合っている・間違っている以前の問題ということになります。

2.4GHz帯と5GHz帯、倉庫ではどちらが向いているか

Wi-Fiで使われる周波数帯には、2.4GHz帯と5GHz帯があります(最近ではWi-Fi 6Eの6GHz帯も加わりました)。

  • 2.4GHz帯……電波が遠くまで届き、棚や壁の裏側にも回り込みやすい。ただし電子レンジやBluetooth機器と干渉しやすく、速度は出にくい
  • 5GHz帯……高速で干渉が少ない。ただし直進性が高く、障害物に弱い

倉庫は、金属ラックが並び、段ボールが積み上がり、天井も高いという、電波にとってはかなり過酷な環境です。速度だけを見れば5GHz帯が有利ですが、棚の奥や壁際まで安定して届くかどうかという観点では、2.4GHz帯のほうが有利な場面が少なくありません。

そして検品作業でやり取りされるのは、バーコードの文字列と数量という非常に小さなデータです。動画を流すわけではないので、通信速度が10倍になっても作業者の体感速度はほとんど変わりません。

「最新の高速ルーターに替えたのに、かえって現場が止まってしまった」という事態は、こうした事情から起こります。

古いハンディターミナルが「2.4GHz帯のb/g」しか使えない理由

2010年前後までに発売された無線ハンディターミナルの多くは、802.11bまたはgのみ、周波数帯は2.4GHzのみという仕様です。

実際の機種で見てみます。

  • キーエンス BT-910……802.11bのみ。セキュリティはWEPとWPAに対応
  • キーエンス BT-1000W(Bluetooth搭載モデル)……802.11b/g/nの2.4GHz帯のみ。セキュリティはWEP・WPA・WPA2に対応
  • キーエンス BT-1000W(Bluetooth非搭載モデル)……上記に加えて802.11aに対応し、5GHz帯も利用可能

同じ型番でも、モデルの違いで対応範囲が変わることがお分かりいただけると思います。「うちのハンディは何に対応しているのか」は、思い込みではなくメーカーの仕様書で確認することをおすすめします。

一方、市販のWi-Fiルーターを新しく買うと、本体側面のシールに記載されている初期SSIDは、多くの場合acやaxといった高速規格のものです。ここに古いハンディターミナルの設定を合わせようとしても、アンテナ自体を認識できません。

接続できないときの確認手順

手順1 ハンディターミナル側の対応規格を調べる

メーカーの製品ページや取扱説明書で、「IEEE802.11」の後ろに書かれているアルファベットと、対応する周波数帯を確認します。ここが出発点です。

手順2 ルーター側のSSIDがどの帯域のものかを調べる

多くのWi-Fiルーターは、2.4GHz帯と5GHz帯で別々のSSIDを持っています。メーカーによって命名規則は異なりますが、末尾が「-G」なら2.4GHz帯、「-A」なら5GHz帯という表記がよく使われます。

ハンディターミナルに設定するのは、2.4GHz帯のSSIDです。

手順3 バンドステアリングやメッシュ機能を確認する

最近のルーターやメッシュWi-Fiには、2.4GHzと5GHzを1つのSSIDにまとめ、端末ごとに自動で振り分ける「バンドステアリング」という機能があります。便利な機能ですが、古い端末が正しく振り分けられずに接続できないことがあります。

この場合は、管理画面からバンドステアリングを無効にするか、ハンディターミナル専用に2.4GHz固定のSSIDを1つ用意するのが確実です。ゲスト用SSIDを流用するのではなく、業務用として分けておくと運用も安定します。

手順4 現場の電波状況を確認する

事務所ではつながるのに倉庫の奥だけ切れる、という場合は規格の問題ではなく電波の到達範囲の問題です。中継機やアクセスポイントの増設を検討します。

棚を組み替えた直後や、在庫を高く積み上げた時期にだけ不安定になることもあります。倉庫の電波環境は、レイアウトの変化で変わるものだとお考えください。

よくあるご質問

ルーターを買い替えたら急につながらなくなりました

もっとも多いパターンです。新しいルーターの初期SSIDが5GHz帯だった、あるいはバンドステアリングが有効になっていた、のいずれかがほとんどです。2.4GHz帯のSSIDを個別に有効化して、そちらを設定してみてください。

古いハンディターミナルは買い替えたほうがよいですか

接続さえできれば、検品作業の性能そのものは古い機種でも大きく変わりません。ただし、セキュリティ方式が古い規格にしか対応していない場合は、無線環境全体のセキュリティを下げることになるため、更新を検討する理由になります。

ハンディターミナルを持っていなくても検品は始められますか

始められます。ゼータロジでは、パソコンのブラウザで使うWebスキャンや、お手持ちのiPhone・iPadを検品端末にする方法をご用意しています。まず検品の運用を試してから、必要に応じて専用端末を導入するという進め方も可能です。

通信規格を確認しても、まだつながらないときは

無線LANの接続でつまずくポイントは、大きく3つあります。

  1. 通信規格と周波数帯(この記事)
  2. セキュリティ方式……WEP、WPA、WPA2、WPA3のどれに対応しているか
  3. IPアドレスの設定……DHCPによる自動取得か、手動設定か

規格を合わせても接続できない場合は、次にセキュリティ方式を確認します。古い端末はWPA2以降に対応していないことがあり、ルーター側が「WPA2以上のみ」の設定になっていると接続できません。

それも問題なければ、IPアドレスの割り当てを疑います。詳しくは以下の記事でご説明しています。

ハンディターミナル検品について、もっと詳しく

無線式とバッチ式の違い、機種を問わない設計、購入が難しい場合のレンタル、端末がなくても始められる無料のWebスキャンまで、ゼータロジのハンディ検品をまとめています。

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